vol.98

メタ認知能力を育てる
一般社団法人日本図書教材協会顧問
筑波大学・上越教育大学名誉教授
辰野千壽

 近年、メタ認知と言う言葉がよく用いられるが、この言葉は1970年代にアメリカの心理学者フラベルによって初めて用いられたという。

 これは、自己の認知(記憶、思考、学習など)とその制御についての知識(メタ認知的知識)であり、学習の過程を体制化したり、監視したり、修正したりする制御の活動(メタ認知的活動)も含んでいる。このような自分の学習や思考の過程を自らチェックし、正誤を確かめ、修正する行為は、もちろん、これまでも見直し、検算、推敲などとして強調されてきたが、メタ認知の研究では、その過程や制御についてより体系的に研究し、学習活動に応用しようとする。自己制御学習は、その典型である。この学習では、自ら学習の計画を立てる、学習の進み具合を自己監視する、学習の結果を自己評価し、必要があれば修正する、といったステップを踏む。

 メタ認知能力は、児童期から発達するが、この能力が優れているほど学力も高いことが示されていることから、この能力を高める方法も研究されている。そのひとつは授業において次のような質問をする方法である。例えば、「家庭学習では、何時から何時まで何を勉強するか計画を立てているか。勉強しようとするときには、すぐ取り掛かれるか。授業では、間違えたとき、なぜ間違えたかを考えるか。授業の後で、理解できたかどうかを振り返ってみるか。別の方法を考えるか」など。なお、このような質問を標準化した学習法検査(例えば、AAI)はメタ認知能力を調べ、それを育成するのに役立つようになっている。

 さらに、次のような指導法も考えられている。まず、教師がメタ認知的活動を説明しながら、手本を示し、子どもに観察させる。次に、子どもは教師の指導を受けながら、教師の手本通りにやってみる。その後、自分ひとりで、実際にやってみる。日常の学習で、このステップを繰り返し、メタ認知技能を習得させようとする。

〜図書教材新報vol.98(平成25年6月発行)巻頭言より〜