vol.92

教育委員会制度の見直し
社団法人日本図書教材協会会長
菱村 幸彦

  大津市で起きた中学生いじめ自殺事件は、教育委員会に対する不信感を増幅させた。悪質ないじめを放置した学校のずさんな安全管理に加えて、それを隠蔽しようとした教育委員会の対応ぶりに、不信の念が広がり、その不信感が教育委員会制度の見直し論に拍車をかけている。

 実は、ここ10年来、主として首長側から教育委員会の改革を求める声が高まっている。つまり、教育委員会はうまく機能していないから廃止して、首長の権限に委ねるべきだというのだ。民主党も、政権交代の当初、教育委員会の権限を首長に委譲し、教育委員会を教育行政の監視機関にする構想を示していた。しかし、民主党政権下では、課題山積で教育委員会制度の改革までは手が回らなかった。

 ところが、今度は、自由民主党が政権公約で教育委員会制度の見直しを掲げている。それによると、首長が議会の同意を得て任命する常勤の教育長を教育委員会の責任者とするなど、国と地方の間や、地方教育行政における権限と責任の在り方について、抜本的な改革を行うという。

 現在の教育委員会制度が発足してから、すでに半世紀経つ。ここらで、その制度の在り方を見直すことはあっていいだろう。自民党の公約でいう改革の中身は、いま一つ明確でないが、教育行政を首長の権限に委ねる方向性を含むとすれば、慎重に検討する必要があると思う。

 いじめが大きな社会問題になっても、首長が直接自分で指揮命令できない仕組みにいらだつ気持ちは分からないではない。しかし、一見、まどろこしいその仕組みが教育の中立性を維持する上で有効に機能しているのだ。イデオロギー対立が激しかった戦後社会の中で、さまざまな政治的主張をもった首長が出現したけれど、教育が比較的中立性と安定性を保ち得たのは、政治から距離をおいた教育委員会制度のゆえであったことを忘れてはならない。

〜図書教材新報vol.92(平成24年12月発行)巻頭言より〜