vol.208

デジタルから逃げていてはならない
一般社団法人日本図書教材協会理事
東北大学大学院情報科学研究科教授
東京学芸大学大学院教育学研究科教授
堀田 龍也

「児童生徒が情報端末を活用することで、視力などの健康面に問題が生じるのではないか」「デジタル教科書より紙の教科書の方が知識が定着しやすいのではないか」など、学校現場の急速なデジタル化を不安に思う学校関係者は少なくない。

私はこういう論調を聞くたびに思う。いずれも程度問題だ、と。

健康面に問題が生じるなら、情報端末はもう使わないと言うのか。では私たちが利用しているスマホはどうだろうか。カーナビは? テレビは? 映画館では暗い中で巨大なスクリーンを集中して見つめるが、これも止めた方がいいのだろうか。健康に気をつけながら利用する術をこそ、子供のうちから教えておくべきではないのだろうか。危険を回避するばかりの発想では、子供たちの将来のためにならないだろう。

デジタル教科書に対する批判の中には、紙の教科書を使わなくなると決めつけているフシがある。文部科学省による専門家会議では、紙の教科書を無くすという議論は今まで一度もない。デジタルを過剰に警戒する人たちの、0か1かを決めつけて考えるデジタル思考の方がむしろ心配だ。新聞や雑誌のネット配信がこれだけ進んでも、未だに新聞紙も雑誌も無くなっていない。何年もかけて次第に移行していくだけのことであり、それはレストランを調べたり新幹線を予約したりするのが次第にネットに移行していくのと同じ現象に過ぎない。

振り返って、学校教材はどうだろうか。紙の教材の学びやすさ、定着のしやすさに、教材メーカーは自信を持っていないのだろうか。だからといって、学校教材をデジタルで配信することのメリットは享受しないのだろうか。紙とデジタルの良いとこ取りが望ましいのではないか。次第に移行していくのは確実なのだから。

今まで慣れてきた商習慣にこだわっていては、DXに乗り遅れる。今こそ挑戦の時だ。

〜図書教材新報vol.208(令和4年8月発行)巻頭言より〜