vol.200

ポストコロナ時代の『カリキュラム再考の十の鍵』(ユネスコ(IBE))
一般社団法人日本図書教材協会監事
広島大学名誉教授
二宮 皓

教科書・カリキュラム関係の資料を整理していたところ、偶然にユネスコ国際教育局=IBEの標記の資料が出てきた。2021年2月に公表されたものである。パンデミックという「世界的な破壊的・構造的な社会変化」の中にあって教育(制度)も根底からの変革が求められるという問題意識からのカリキュラム再考の討議資料である。

再考の『十の鍵』は、@若者世代の理解、A脆弱性の要因との戦、B学校と家庭の間の理解の補強、Cグローカル(glo-local)教育の深化、D人への焦点の強化、E価値のシナジーの促進、F多様性の尊重、G自由の強化の教育への焦点化、Hハイブリッド型教育への移行及びI教育者への愛情の鼓舞、である。

最も興味深いD人(パーソン)への焦点化についてみる。今こそ改めて「教育における社会的・人間的・普遍的でかつグローバル精神の正義の価値や重要性を再度肯定する」という視座から人間の発達と健やかな生き方について取り扱うことが学校のカリキュラムに求められる、という。

2つ目は、E価値のシナジーである。価値こそが、どのような形態であれ、教授・学習の「不可避的で有益な基盤」であり、「自由、正義、連帯、包摂、平等、結束、卓越、健やかな暮らしなどの価値の相補性を理解することが社会の調和と発展へのメッセージの基盤であり、教育者と生徒が共有すべき重要なこと」である、という。

最後にAの脆弱性との戦についてみると、人は「悲しみ傷つくことにセンシティブであり、また傷つきやすい」という「人間の力の多元的な欠陥」を意味する脆弱性を自覚し、対処するには、個人としての人を理解し、尊重し、支援することが求められる、という。

知識や技能ではなく「人間」が中心となるとするナイーブなカリキュラム観でもある。

〜図書教材新報vol.200(令和3年12月発行)巻頭言より〜