vol.196

図書教材の特徴を生かした活用
一般社団法人日本図書教材協会会長
辻村 哲夫

先日、日図協からの帰途地下鉄で一心不乱にテスト問題に取り組む小学生を見掛けた。こんな子もいるのに、従来から日本の子どもたちの課題は、国際比較で学力の高さに対し学習意欲や学ぶことへの肯定感が低いことなのである。

このことは、小学校58か国・地域、中学校39か国・地域が参加した直近2019年の国際数学・理科教育調査の結果でも明らかになった。

調査のなかで算数・数学・理科について「勉強は楽しいか」を尋ねた結果は、小学生の理科を除いて、小学生の算数、中学生の数学・理科ともに肯定的な回答をした者の割合は国際平均を下回っていた。さらに中学生のみを対象とした調査で「勉強が日常生活に役立つと思うか」との問に肯定的な回答をした者の割合も数学・理科ともに国際平均を下回っていたのである。

学力の点では、小・中学生そろって両教科とも5位以内という好成績なのに、である。成績はよくても「好きではない」という状況は教育の将来を考えると決して看過できないことだ。

調査結果を踏まえて文部科学省も施策を発表している。そのなかに「算数・数学・理科を学ぶ楽しさを実感させる工夫や機会の設定」とある。

重要な提言だと思う。ではどうするか。ポイントは「楽しさ」は学習内容がわかって初めて味わえるもので、理解不十分なまま授業が進んでいっては「楽しさ」は味わえないということだ。

それには子どもたちが自分のペースでわかるまで繰り返し学習することが必要なのである。

この個別最適な学びを可能にする方策はいろいろと考えられるであろうが、テストやワークなどの図書教材の活用は有効な方法だ。その際重要なことは、教師が適時その成果を点検し最適なTPOでその図書教材の特徴を生かした活用をするということだと思う。

地下鉄で出会った子どもの様子を微笑ましく思いながら、この子が「学ぶ楽しさ」を知り順調に力を育んでいくことを願ったことだった。

〜図書教材新報vol.196(令和3年8月発行)巻頭言より〜