vol.171

「評定」の存続
一般社団法人日本図書教材協会会長
菱村 幸彦

学習評価は「観点別評価」と「評定」の二本立てで行われている。児童生徒や保護者にとっては、観点別評価といわれてもピンとこないが、通知表でおなじみの「5、4、3……」で表示される評定は分かりやすい。

だが、学習評価の専門家はそうは考えないようだ。新学習指導要領に対応した学習評価の在り方を検討した専門家会議では、評定廃止論が有力だった。廃止の理由として、@観点別評価があれば評定は必要ない、A入試選抜では大学や高校ごとに選抜の観点が異なるのに評定にその情報がない、B評定は相対評価と誤解され、保護者の意識が「序列」に向かう、Cその結果、絶対評価の有効活用を妨げている――等々の諸点が指摘された。

しかし、文部科学省は、最終的に評定を存続させた。文科省は存続の理由を明示していないが、考えられるのは、次の諸点である。

第1は、入学者選抜における必要性である。高校入試では調査書に記載される教科の「評定点」が利用されている。また、大学入試とくに推薦入試では「評定の平均値」が推薦基準となる。評定が廃止になれば、中学校や高校の進路指導の在り方を根本的に変更せざるを得ない。

第2は、各種奨学金の審査である。自治体等が運用する奨学金給付の選考には、評定点が基準として用いられている。評定を無くしてしまうと奨学金を運用する担当者はもちろん、保護者からも批判が出るおそれがある。また、高等教育の無償化に関わる給付型奨学金の選考基準でも評定点の利用が必要となろう。

第3は、評定の分かりやすさである。評定は、成果や成長の度合いを端的に示し分かりやすい。児童生徒や保護者が達成感や成就感を得たり、学習への動機付けを高める上で効果的である。この点、観点別評価は分かりづらい。

今回の指導要録の改善通知で評定が維持されたのは正解だった、と思う。

〜図書教材新報vol.171(令和元年7月発行)巻頭言より〜