vol.141

なぜ改訂は10年サイクルなのか
一般社団法人日本図書教材協会会長
菱村 幸彦

 中央教育審議会から次期教育課程に関する答申が出された。この3月末までには新しい学習指導要領が告示される。

 今回の改訂は、昭和22年に最初の指導要領が制定されて以来7回目の全面改訂である。最初の指導要領からちょうど70年経つから、この間、10年のサイクルで改訂してきたわけだ。

 社会の変化の激しい今日、10年サイクルは長すぎる、もっと短いサイクルで改訂すべきだという意見がある。しかし、実務的には10年が限度である。

 というのは、指導要領の改訂は、長期間を要する仕事だからである。まず、指導要領の実施状況について、4年ないし5年の観察が必要である。その間に問題点を見極め、中教審で審議し、その結果に基づいて指導要領を作成するのに3年弱はかかる。引き続いて、新指導要領に基づく教科書の作成に1年、検定に1年、採択に1年と計3年が必要である。こうしてみると、10年サイクルがぎりぎりなのだ。

 他方、指導要領は必ずしも10年ごとに改訂する必要はないではないか、という意見もある。しかし、時代の変化や子供たちの状況、社会の要請等を踏まえ、児童生徒に変化に対応できる資質能力を育むためには、常に教育内容を刷新する必要がある。そのためには、最小限10年ごとの指導要領の改訂が欠かせない。

 さらにもう一つ、指導要領の改訂は、教師の資質能力の向上に役立つ。指導要領が改訂されると、全国的に趣旨徹底の講習会や研究会が開催され、教師に指導要領について学ぶ機会が提供される。また、教科書が全面的に書き改められるので、新しい教科書の研究を通して、教師の指導力がリフレッシュされる。

 かつて、イギリス教育省の専門家が日本の教育の視察に来日した折り、我が国の指導要領の改訂システムとその周知方法を説明したところ、よく考えられていると高く評価された。

〜図書教材新報vol.141(平成29年1月発行)巻頭言より〜