vol.134

世界の資質・能力(コンピテンシー)形成カリキュラム改革の動向(上)
一般社団法人日本図書教材協会監事
日本教材学会会長
比治山大学学長
二宮 皓

 この度の我が国の学習指導要領(教育課程)の改定の背景には、諸外国における生徒の資質・能力(コンピテンシー)育成への大いなる転換動向がある。筆者も国立教育政策研究所等の外国の動静に関する基礎的調査において指導的立場で関与し、国際会議もお世話したことがあり、それなりに意見を述べることが許されると思っている。

 知識・技能あるいは理解を目標とするカリキュラムが主流をなしてきたが、OECDのプログラムDeSeCo(能力の定義と選択)によるキー・コンピテンシーの提言以来、ニュージーランドをはじめ多くの国で伝統的な教科知識中心のカリキュラムの見直しが行われるようになった。新たな教育課程の狙いは、知識を順序立てて分かり易い形で教授することではなく、汎用的能力、ジェネラル・ケイパビリティ、キー・コンピテンシー、キー・スキルなどと呼称される時代の変化に強い基本的資質・能力を育成すべき力として位置付けることにあった。知識・理解でいえば、知識を獲得することに加えて「知識を活用する力」が重要であるという共通認識(PISA)も拡大してきている。知識偏重からの脱却である。

 たとえばオーストラリアでは、汎用的能力として@リテラシー、Aニューメラシー、BICT能力、C批判的・創造的思考力、D倫理的行動、E異文化間理解及びF個人的・社会的能力を定めている。

 問題は、いつでもそうであるが、汎用的能力を誰がどのように定義するか、それらは各教科の中で形成できるのか、総合的な時間などの別枠のカリキュラムで形成するのかが問われ続ける。さらに定義された資質・能力の正統性をどのように担保するかの課題は絶えず残る。また育成できる能力とできなかった能力をどのように分析・評価するのか。世界の教育課程基準に求められている課題である。

〜図書教材新報vol.134(平成28年6月発行)巻頭言より〜