vol.112

教授教材と連携した学習材
日本教材学会会長
一般社団法人日本図書教材協会副会長
川野辺敏

 『教材事典』を作成している過程で、日本教材学会の英文表記をという要請があり、まだ十分吟味していなかったことに気付いた。そこで、日本をJapanにするか、Japaneseにするかに始まり、教材をどう表記するかということになった。そこで「Teaching materials」でいく案もあったが「Teaching and Learning materials」に決定させて頂いた経緯を思い出す。これからの教材の在り方を考えると、教授(授業)のための教材と同時に、児童・生徒を含め、成人・高齢者に対する学習材が大きな比重を持つようになるという配慮からである。

 私事で恐縮だが、『戦争と平和』(トルストイ)、『チボー家の人々』(ロジェ・マルタン・デュ・ガール)などを読んでいると、1810年当時のナポレオンのモスクワ占拠・敗走あるいは第1次世界大戦時のパリ近郊の人々のなまなましい生活(教科書では教えられない)が描きだされている。司馬遼太郎の『菜の花の沖』・『坂の上の雲』や浅田次郎の『終わらざる夏』なども、江戸中期や日露戦争あるいは第2次世界大戦期の北辺の庶民の状況が興味深く描きだされている。成人・高齢者には、たまらない「社会科」の「学習材」である。

 児童・生徒にも、最近では、大人も参考になる児童文学書(例えば、上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』など)が評判になり、家庭で親子で読む学習材としても役立っていると報じられており、図書館司書・教師の一層の目配りが期待されている。ただ、教材研究・作成に関与するものとしては、それに満足するだけでなく、各教科・領域別に、授業で習得した知識・技能を前提とし、それを深め、広め、しかも、学童保育の場や家庭でも活用できる、楽しい「学習材」の作成が待たれているといえよう。

〜図書教材新報vol.112(平成26年8月発行)巻頭言より〜