vol.110

学習における「従事」を促進する
一般社団法人日本図書教材協会顧問
筑波大学・上越教育大学名誉教授
辰野千壽

 学習の効果を上げるためには、学習者が積極的に学習活動を行うことが必要であるが、近年学習者がどのように学習にかかわっているかを「学習における従事(engagement)」と表現し、それを高める方略を考えている(オ・ドンネルら 二〇〇七)。

 そこでは、従事の状況をみる観点として、次の四つをあげている。

 @行動的従事 熱心に、注意を集中し、積極的、持続的に協力しているかをみる。

 A情緒的従事 学習の際、課題に興味をもち、熱心に楽しみながら学習しているかをみる。

 B認知的従事 学習において記憶、思考、判断のような認知的活動を自分で計画、監視、評価し、さらに要約・精緻化のような洗練された学習方略を用いているかを問題にする。

 C自己表現(発言) 学習の際に発言するかを問題にする。積極的従事の生徒は発言、提案、質問、討論を行うが、消極的従事の生徒は発言しないで、教師の発言・指示を待つだけである。

 積極的に従事させるために、次の三つの心理的欲求(内発的欲求)の充足を考える。@自律的欲求=自分自身で決定し、行動しようとする欲求である。A能力欲求=ある行為を成し遂げる能力をもちたいという欲求、すなわち有能になりたいという欲求である。B関係性欲求=他の人と密接な情緒的結びつきをもち、暖かい関係を作りたいという欲求である。

 なお、積極的従事の源となる内発的欲求を活性化する方法として、好奇心、興味、積極的感情(よい感情、快の感情)をあげ、また、外発的動機づけとして報酬の効果も認めている。

 さらに、教師は次のことにより従事を高めようとする。@思いやりのある方法で生徒を指導する。A生徒の自律、あるいは自己決定を支援する。B明確な構造(体系化)を与える。C興味のある活動を提供し、有能感、自己評価、仲間との協力を促進する機会を与える。

〜図書教材新報vol.110(平成26年6月発行)巻頭言より〜