教材とは何か

       社団法人日本図書教材協会理事
       東京学芸大学名誉教授
       杉山 吉茂

 10月22日に東京学芸大学で行われた日本教材学会の第23回研究発表大会で、「改めて教材とは何か≠問う」をテーマにシンポジウムが行われた。その中で、日大の小笠原喜康先生は、教材には「道具」と「内容」の二つの軸があると言われて議論を展開された。どちらを指すかは教科によって異なるという。「教科書は主たる教材である」と言っているときは「道具」を指しているし、数学で教材研究と言っているときは内容を指している。改めて広辞苑を引くと「教授・学習の材料・学習の内容となる文化的素材をいう場合と、それを伝える媒体を指す場合がある。教材研究の教材は前者、教材作成は後者になる」とある。

 このように「教材」という言葉は「文化的素材」にも「媒体」にも使われるが、学習指導の向上を考えるときには、内容の方に重きを置いた方がよいのではないかと思う。「教科書は主たる教材である」と言っているが、「教科書」は媒体であり、本当の教材は、そこに盛られている内容であるはずだからである。教科書のよしあしは、使われている紙などの体裁にあるのではなく、内容の取り上げ方にある。

 普通の研究会で「教材」という言葉はあまり出てこないが、教材に携わっている我々は「教材」という言葉を意識して使うようにしてみてはどうだろうか。「〜を教えたいとき何を教材とするか」「この文学作品を教材として何を教えるか」「この文学作品を教材としたとき、どのように扱う(どの媒体に載せる)と、教えたいことがよく伝わるか」というように「教材」という言葉を使うようにしてみたい。数学で言えば「三平方の定理を教えるのに何を教材(媒体でなく)にしたらよいか」「三平方の定理を教材として何を教えるか」というように意識的に言ってみる。これらのことは無意識に考えていることではあるが、敢えてそう言ってみてみることによって得ることがあるような気がする。


〜図書教材新報vol.79(平成23年11月発行)巻頭言より〜



◇バックナンバー◇

法律や指導要領で使用を奨励/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.78」より〜

望まれる教科横断の教材開発/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.77」より〜

再出発には「夢」を力に/川野辺 敏 〜「図書教材新報vol.76」より〜

全図協の活動のさらなる充実を目指して/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.75」より〜

考える力の育成を考える/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.74」より〜

子どもたちの笑顔が戻ってきた/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.73」より〜

ネットカンニングに思う/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.72」より〜

後継者を大切に育てるため「日本教材大学講座」開設を/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.71」より〜

Beyond Textbooks/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.70」より〜

教材の骨格と脱皮/川野辺 敏 〜「図書教材新報vol.69」より〜

各団体代表者年頭所感 〜「図書教材新報vol.68」より〜

学年に相応しい扱いを/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.67」より〜

一般社団法人全国図書教材協議会の発足/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.66」より〜

教具の教材化/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.65」より〜

図書教材とデジタル教材/川野辺 敏 〜「図書教材新報vol.64」より〜

処理の深さを考える/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.62」より〜

評価情報の共有が必要/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.61」より〜

変われば進歩?/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.60」より〜

教師と教材/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.59」より〜

痛感する外来語解説教材の作成/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.58」より〜

教材の裾野を広げる/川野辺 敏 〜「図書教材新報vol.57」より〜

各団体代表者年頭所感 〜「図書教材新報vol.56」より〜

販売店としてのコンプライアンスについて/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.55」より〜

知識を考える/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.54」より〜

父母は習慣の教師なり/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.53」より〜

ものさし こころざし/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.52」より〜

若手教員の指導力の向上/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.51」より〜

文字・活字教材と映像教材の間/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.50」より〜

ソフトな発想での教材作り/川野邊 敏 〜「図書教材新報vol.49」より〜

図書教材の著作権の尊重を/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.48」より〜

メタ認知を活かす/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.47」より〜

学びて思わざれば/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.46」より〜

これからの教材への期待/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.45」より〜

各団体代表者年頭所感 〜「図書教材新報vol.44」より〜

「学習習慣の確立」をはぐくむために/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.43」より〜

言語力はスポーツにも重要/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.42」より〜

教材作成「転換の年」/川野邊 敏 〜「図書教材新報vol.41」より〜

成果挙げる幹事会の活動/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.40」より〜

読解の方略を生かす/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.39」より〜

いよいよ英語教育が始まる/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.38」より〜

新しい学習指導要領に思う/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.37」より〜

新学習指導要領の告示と教材/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.36」より〜

「臭い」をどう教材化するか/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.35」より〜

「教材作成」二つの視点/川野辺 敏 〜「図書教材新報vol.34」より〜

先生との絆を大切に/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.33」より〜

各団体代表者年頭所感 〜「図書教材新報vol.32」より〜

授業の媒体を生かす/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.31」より〜

「理念」は間違っていない/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.30」より〜

PISAの試験が求めているもの/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.29」より〜

「児童・生徒一人ひとりの学習状況に応じた教材の開発」/佐野 金吾
           〜図書教材新報vol.28より〜

教師対象教材の開発/新井 郁男 〜図書教材新報vol.27より〜

「教材の多様化」への対応/川野辺 敏 〜図書教材新報vol.26より〜

福利厚生に共済制度の活用を/清水 厚実 〜図書教材新報vol.25より〜

改めて学習効果の転移を考える/辰野 千壽 〜図書教材新報vol.24より〜

遅れるのはやむを得ないが/菱村 幸彦 〜図書教材新報vol.23より〜

教科書使用の自己評価と他者評価/新井 郁男 〜図書教材新報vol.22より〜

基礎の基礎としての読書教材/川野邊 敏 〜図書教材新報vol.21より〜

各団体代表者年頭所感 〜図書教材新報vol.20より〜

出版社、販売店相互の信頼大切に/清水 厚実 〜図書教材新報vol.19より〜

家庭学習のすすめ/辰野 千壽 〜図書教材新報vol.18より〜

“流行り言葉” の教育論/菱村 幸彦 〜図書教材新報vol.17より〜

本・図書・書物・書籍考/新井 郁男 〜図書教材新報vol.16より〜

改めて基礎・基本教材を考える/川野邊 敏 〜図書教材新報vol.15より〜

教材の活用で学力の向上を/清水厚実 〜図書教材新報vol.14より〜

習熟度別指導を生かすには/辰野千壽 〜図書教材新報vol.13より〜

ユニークな日本教育論/菱村幸彦 〜図書教材新報vol.12より〜