新しい教科書と図書教材

       社団法人日本図書教材協会会長
       菱村 幸彦

 新年度から中学校の新学習指導要領が全面実施となる。新しい教科書は、ゆとり教育で削減された内容が復活したり、基礎・基本の反復学習や習熟に応じた発展学習の教材が盛り込まれたりで、教科によっては3割もページが増えている。

 で、こんなに分厚い教科書を限られた時間で、どうやって教えるのか、という懸念の声が出ている。しかし、これは授業で教科書をどう使うかの問題であろう。つまり、教科書を目的的資料として扱うか(教科書を教える)、それとも方法的資料と扱うか(教科書で教える)で答が異なる。

 我が国の教育課程は、教科書カリキュラムだといわれることがある。指導計画も授業の展開もすべて教科書どおり、最初のページから最後のページまで隈なく教える――いわば教科書ベッタリのカリキュラムというわけだ。これは「教科書を教える」やり方である。こうした授業では、教科書が分厚くなれば、授業時数が足りなくなるのは必定であろう。

 これに対し、「教科書で教える」授業ならば、教科書にとらわれないで、教師の創意工夫によって多様で弾力的な授業を展開できるから、教科書が少々分厚くなっても、格別困らない。

 学校教育法は、学校では教科書を「使用しなければならない」と定め、かつ、教科書以外の教材で「有益適切なもの」の使用を認めている(34条)。つまり、教科書法制では、教科書を方法的資料と定めた上で、教師の創意工夫を生かした授業を支援する多様な図書教材等の使用を予定しているわけだ。

 我が国の図書教材の豊富さと質の高さは、他国に例を見ない。新学習指導要領の全面実施に当たっては、教科書と多様な図書教材を適切に組み合わせて、一人一人の生徒の実態に即応した、効果的な授業が展開されることを期待したい。


〜図書教材新報vol.80(平成23年12月発行)巻頭言より〜



◇バックナンバー◇

教材とは何か/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.79」より〜

法律や指導要領で使用を奨励/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.78」より〜

望まれる教科横断の教材開発/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.77」より〜

再出発には「夢」を力に/川野辺 敏 〜「図書教材新報vol.76」より〜

全図協の活動のさらなる充実を目指して/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.75」より〜

考える力の育成を考える/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.74」より〜

子どもたちの笑顔が戻ってきた/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.73」より〜

ネットカンニングに思う/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.72」より〜

後継者を大切に育てるため「日本教材大学講座」開設を/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.71」より〜

Beyond Textbooks/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.70」より〜

教材の骨格と脱皮/川野辺 敏 〜「図書教材新報vol.69」より〜

各団体代表者年頭所感 〜「図書教材新報vol.68」より〜

学年に相応しい扱いを/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.67」より〜

一般社団法人全国図書教材協議会の発足/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.66」より〜

教具の教材化/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.65」より〜

図書教材とデジタル教材/川野辺 敏 〜「図書教材新報vol.64」より〜

処理の深さを考える/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.62」より〜

評価情報の共有が必要/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.61」より〜

変われば進歩?/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.60」より〜

教師と教材/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.59」より〜

痛感する外来語解説教材の作成/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.58」より〜

教材の裾野を広げる/川野辺 敏 〜「図書教材新報vol.57」より〜

各団体代表者年頭所感 〜「図書教材新報vol.56」より〜

販売店としてのコンプライアンスについて/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.55」より〜

知識を考える/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.54」より〜

父母は習慣の教師なり/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.53」より〜

ものさし こころざし/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.52」より〜

若手教員の指導力の向上/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.51」より〜

文字・活字教材と映像教材の間/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.50」より〜

ソフトな発想での教材作り/川野邊 敏 〜「図書教材新報vol.49」より〜

図書教材の著作権の尊重を/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.48」より〜

メタ認知を活かす/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.47」より〜

学びて思わざれば/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.46」より〜

これからの教材への期待/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.45」より〜

各団体代表者年頭所感 〜「図書教材新報vol.44」より〜

「学習習慣の確立」をはぐくむために/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.43」より〜

言語力はスポーツにも重要/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.42」より〜

教材作成「転換の年」/川野邊 敏 〜「図書教材新報vol.41」より〜

成果挙げる幹事会の活動/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.40」より〜

読解の方略を生かす/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.39」より〜

いよいよ英語教育が始まる/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.38」より〜

新しい学習指導要領に思う/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.37」より〜

新学習指導要領の告示と教材/佐野 金吾 〜「図書教材新報vol.36」より〜

「臭い」をどう教材化するか/新井 郁男 〜「図書教材新報vol.35」より〜

「教材作成」二つの視点/川野辺 敏 〜「図書教材新報vol.34」より〜

先生との絆を大切に/清水 厚実 〜「図書教材新報vol.33」より〜

各団体代表者年頭所感 〜「図書教材新報vol.32」より〜

授業の媒体を生かす/辰野 千壽 〜「図書教材新報vol.31」より〜

「理念」は間違っていない/菱村 幸彦 〜「図書教材新報vol.30」より〜

PISAの試験が求めているもの/杉山 吉茂 〜「図書教材新報vol.29」より〜

「児童・生徒一人ひとりの学習状況に応じた教材の開発」/佐野 金吾
           〜図書教材新報vol.28より〜

教師対象教材の開発/新井 郁男 〜図書教材新報vol.27より〜

「教材の多様化」への対応/川野辺 敏 〜図書教材新報vol.26より〜

福利厚生に共済制度の活用を/清水 厚実 〜図書教材新報vol.25より〜

改めて学習効果の転移を考える/辰野 千壽 〜図書教材新報vol.24より〜

遅れるのはやむを得ないが/菱村 幸彦 〜図書教材新報vol.23より〜

教科書使用の自己評価と他者評価/新井 郁男 〜図書教材新報vol.22より〜

基礎の基礎としての読書教材/川野邊 敏 〜図書教材新報vol.21より〜

各団体代表者年頭所感 〜図書教材新報vol.20より〜

出版社、販売店相互の信頼大切に/清水 厚実 〜図書教材新報vol.19より〜

家庭学習のすすめ/辰野 千壽 〜図書教材新報vol.18より〜

“流行り言葉” の教育論/菱村 幸彦 〜図書教材新報vol.17より〜

本・図書・書物・書籍考/新井 郁男 〜図書教材新報vol.16より〜

改めて基礎・基本教材を考える/川野邊 敏 〜図書教材新報vol.15より〜

教材の活用で学力の向上を/清水厚実 〜図書教材新報vol.14より〜

習熟度別指導を生かすには/辰野千壽 〜図書教材新報vol.13より〜

ユニークな日本教育論/菱村幸彦 〜図書教材新報vol.12より〜